2010年にiMacを購入した頃から1日本語入力ソフトはJustSystemsのATOKを使ってきた。
当時のMac OS Xの日本語入力はお世辞にも良いものとは言えず、変換候補を探すのに非常に苦労したためだ。
無料で利用できるGoogle日本語入力も、当時は過剰学習と言えばいいのだろうか、ある程度までは効率的にやってくれるのだが、しばらく使い込むと逆に非効率になってしまうという気が見られていた。
それに比べ、ATOKは過剰学習したものの削除が容易にできるという点からしばらく愛用することとなる。
ATOK Syncで変換候補が同期できるのが魅力だった
ATOKの良い点といえば、複数デバイス間で変換候補が同期できるATOK Syncという機能だ。
サブスクリプション版の場合は契約期間中、パッケージ版の利用者は12ヶ月間無料で利用できる(次バージョンの購入またはATOK Syncのみ延長購入可)。これでiOS版のATOKが出るまでもATOK Padと同期できていたので非常に便利だった。
WindowsやAndroidとも変換候補が共有できるので、Mac OSユーザーでなくてもそのメリットは大きかったことだろう。
ただ、ここ数年のmacOS(Sierraからこの表記になった)の日本語入力の進化は著しく、推測変換候補を自動的に表示してくれる「ライブ変換」機能の搭載や変換精度の向上で他社IMEを入れなくても問題が出ないくらいまでになっていた。
macOSとiOSの間であれば、iCloud経由でユーザー辞書の共有はできるし、(少し手間ではあるが)出にくい候補をユーザー辞書に入れてしまえば十分動いてくれる。
High Sierraの二言語入力機能
今月26日にアップデートされるHigh Sierraでも日本語入力は大幅に進化している。
パブリックベータ版の感想は利用規約上紹介できないが、プレビューページにあるように、日本語入力モードで「cあふぇ」と入力すると「cafe」という変換候補が出てくるようになった。
こういった二言語入力機能の大幅な改善は、純正日本語入力に戻るには十分な理由となった。2
ATOK Padの更新停止が痛い
JustSystemsはiOSアプリのATOK Padをアップデートする予定がないようで、32ビットアプリが動かなくなるiOS 11ではATOK Padが使用不能になる。
iPadにベータ版を入れてしまった筆者にはこれは痛手で、iPadでハードウェアキーボードを使用する際に愛用していたATOK Padが使えなくなる3ということによる損失が非常に大きかった。
iPadでHHKBを使ってATOKを使う術が断たれた以上、macOSとiOSとの間でIMEを使い分けてまでATOKを利用し続けるということは考えられない。全てのデバイスで純正IMEを使う。そう決めたのだった。
だいたいのことは純正アプリだけで戦える
Apple製品のいいところは、高機能を求めなければだいたいのことは純正アプリだけで解決できるという点だ。
日本語入力に関しては今まで追いついていなかったためにサードパーティ製のIMEの導入が半ば必須というくらいだったが、ここ数年のアップデートによって、それももはや不要になりつつある。
Appleによるユーザー囲い込みはどこまで進むのか、今後の展開が楽しみだ。
追記
…とはいえ、筆者が使っているのはATOK 2016。ATOK for Macも2017年版からディープラーニング4を用いた「ATOKディープコアエンジン」という新システムに切り替わっているので、もしかすると使ってみる価値はあるのかもしれない。
そう思うとうっかり購入ボタンを押してしまいそうになるものだが、ここ最近は色々なものを買ってしまって支払残高が大変なことになっているから自制したいと思う。
脚注
- Windowsをメインで使っていた頃(2000年代後半)にもATOKを購入したような気もする。ワープロソフト「一太郎」や表計算ソフト「花子」などが入った「Just Suite」という統合オフィスソフトの体験版を試用した前後に買ったはずだが、あれはいつだっただろうか。当時はiPodを買う前で、音楽管理ソフトにBeatJamを使っていたのでその流れで買ったのだと思う。いずれにせよ、記憶は定かではない。 ↩
- この記事の大部分はHigh Sierra(ベータ版)の入ったMacBook Airで書いたのだが、SierraのiMacで純正IMEを用いて編集してみると少しどころではない違和感がある。その意味では、Sierra以前のMacにはATOKを薦める。 ↩
- JustSystemsはiOS版のATOKをリリースしているが、iOSにはハードウェアキーボード使用時にサードパーティ製のIMEを使用することができないという制約がある。外付けでHHKB-BTを使っている筆者にとっては、ATOKを使用するにはATOK Padを使うしかなかったということだ。 ↩
- 機械翻訳がなかなか進歩しないのを見ると、言語分析にAIのディープラーニングの手法が有効かどうかという点については懐疑的になってしまう。ただ「近似値を出すことまではできる」とも聞くので変換候補を提示するIMEにはある程度使えるものなのかもしれない。 ↩