金子修介監督作品「希望の党☆」を振り返る

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「希望の党」という国政政党ができるらしいという新聞記事を見て、目が点になってしまった。2005年に総務省と財団法人明るい選挙推進協会のキャンペーン「It’s your CHOICE!」で制作された金子修介監督の作品と同じタイトルだったからだ。渋谷飛鳥主演のこのショートムービーは、政治に強い関心を抱く娘(渋谷飛鳥)と選挙を棄権した父親(木下ほうか)を描いた悲劇の物語。制作から12年経ってはいるが、この機会に振り返ってみたい。(この記事には物語の結末への言及があるので、未見かつネタバレを嫌う人はYouTubeで公開されている動画を見てから読んでほしい)

選挙権は先人が勝ち取った権利

民衆が選挙によって選んだ議員(民選議員)が政治を行なう。現代を生きる私たちの多くは、生まれながらにしてこの権利を「当たり前」に与えられている。しかし歴史の教科書を開けばわかるように、いわゆる「普通選挙」というものが確立したのは、ごくごく最近のことである。

二十歳過ぎれば誰でも選挙権を得られる、というのは「当たり前」の権利として認識されているが、人間の歴史を振り返れば、これが決して「当たり前」では無く、長い戦いのなかで獲得された「権利」だということが分かる。

その「権利」を大切にしないのなら、剥奪されても文句は言えないのではないか、という仮説から、ドラマを作ってみた。

It’s your CHOICE「希望の党☆」

日本国の前身にあたる大日本帝国では1925年に加藤高明内閣で制定された(いわゆる)普通選挙法によってそれまでの納税要件が撤廃された。成年男子であれば選挙権が与えられることとなったものの、女性が選挙権を獲得するのは、太平洋戦争後の1945〜1946年。日本国憲法が成立する少し前のことだ。日本で、全ての国民が選挙権を行使できるようになってから、70年ちょっとしか経っていない。私(たち)の祖父母の時代、普通選挙は「当たり前」ではなかったのだ。

「政治に参画しない人」から選挙権を剥奪する

「たかが選挙」で日本の未来が決まる——。「どこの政党が政権を取ろうと、悪いことなんかできっこない」なんて思っていても、その日は突然に訪れるのだ。

「本当に明日(選挙に)いかないと知らないよ?」

「昔のようなお父さんと私でいられなくなるかも」

作中では、新党「希望の党」が躍進して政権を奪取したことによって国民生活に大きな影響が出る様が描かれている。選挙に行かなかった父親の仁志が「国民権利義務省」から受け取った封書には、「国民選挙義務新法に基づき、その選挙権を剥奪する」と書かれていた。「国政選挙に3回連続で投票に行かなかった人から選挙権を剥奪する」。それが「希望の党」の公約だったのだ。政治に関心のない成人より、勉強して試験に合格した子供。かつてあった納税額による制限ではなくて、学力と参画意識による制限。制限選挙に変わりはないが、それなりに筋が通っているものだから論駁するのが難しい。

「誰が基準を定めるのか? またその根拠は何か?」。為政者が恣意的にコントロールしてしまう可能性があるからこそ、選挙権を制限することは悪とされる。しかし、普通選挙でそれを乗り越えられるかと言われると、どう反論したらいいのか、答えに窮してしまう。普通選挙下の有権者が出した答えは、本当にコントロールされていないのか。それは誰にもわからない。

「痴漢は死刑」

「冤罪というリスクを冒してでも犯罪者を許さない。そういう姿勢を示すことが現実問題として大事」

痴漢についてはあまり覚えていないが、「希望の党☆」が発表された2005年頃は飲酒運転の罰則強化などが叫ばれていたように記憶している。法による裁きというのは被害者を満足させるような量刑を科すことではないのだが、2004年に導入された裁判員制度など「市民感覚に基づいた量刑」というような言葉をあちこちで聞いたように思う。罰を厳しくすれば犯罪が減るだなんて、そんな前近代的な考え方はもうヤメにしませんか?

「希望」と言う名のディストピア

「今の制度が嫌だったら、ちゃんとそれを主張して、一票、『希望の党の政策に反対です』って、選挙に行って投票してくればいいでしょ」

「ああ、ごめん、選挙権なかったんだっけ」

娘が家に持ち込んだ野良犬を処分して「生類憐れみの法」違反で逮捕される母親、(冤罪かもしれない)痴漢で死刑になる隣の近藤さんのご主人。「希望の党」が政権を取ったこの国はどんどんおかしくなっていく。そしてついに娘の万里江が…。

「戦争反対! 今から選挙に行くぞ。…選挙がないことくらい、お父さんわかってるよ。でもな、選挙に行くぞ。万里江を戦争に行かせないためなら、なにがなんだって選挙に行くぞ。選挙権がなくったって、選挙がなくったて、俺は、選挙に行くぞ。」

この父親は、愛娘が戦争に行くことになって初めて、自分が投票に行かなかったこと悔いるのだ。選挙権が剥奪されて、さらに選挙が行われなくなった世界で。

普通選挙。それは(名もなき)先人が勝ち取ったかけがえのない権利のひとつだ。選挙に行こう。権力と戦った先人のために。選挙に行こう。大切な子孫を守るために。そして、何より、自分が後悔しないためにも。

蛇足的な諸々のこと

この動画が公開された当時、筆者は学校帰りにLFX4881のインターネットラジオを視聴していた。ストリーミング放送を録画するフリーソフトをインストールして、「渋谷飛鳥 瞳でネット。」を録画して視聴していたのをよく覚えている(版権上はグレーゾーン?)。実は、高校在籍時に購入したマイパソコン初号機がNECなのは、父親がNECユーザーということよりも渋谷飛鳥さんがNECのCMに出演していたからということのが大きく関与していたりもする(誰も聞いてない)。

最近フォローしてないからどうしてるかわからないけど、とにかく、軍服姿の飛鳥さんが可愛い(特に「後編」の3:15あたりの表情が好き)。あと、神様役の楳図かずお先生面白い。ホラー感を中和してくれる、コミカルな演技にも注目。

おことわり

この記事は金子修介監督作品「希望の党☆」の(12年越しの、そしてある意味時代遅れの)レビューであり、同名で結成される予定の国政政党とは完全に無関係である。この動画のことを知っていれば同名の政党を立ち上げようとは思わないだろうから、恐らく見てはいないのだろう。昨今の社会情勢を見るに不安は拭えないが、より良き未来が訪れることを願う。

追記

自由党(旧・生活の党)と社民党の統一会派の名前が「希望の会」という名前2だということを完全に失念していた。そういえば先の国会のテレビ中継かネット中継かで聞いたような気がする。臨時国会がなかなか開かれないものだからすっかり忘れてしまっていた。差し迫った状況でもないのに衆院解散するの?っていう話はさておき、当記事の内容は、結成される予定の「希望の党」ならびに自由・社民の統一会派「希望の会」とは一切関係がないということを重ねて申し上げる次第である。

関連リンク

  1. LFX488は、ラジオ局のニッポン放送がBSデジタルラジオとインターネットで放送していた動画付きラジオ放送。当時は平日18時から21時まで「ブロードバンド!ニッポン」という帯番組が放送されていた。
  2. 生活・社民、参院統一会派「希望の会」届け出(日本経済新聞電子版)
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TAK

悠木貴仁(P.N.)/TAKは教育系の仕事に従事するアラサー。中高の教員免許(英語)を所有。株式投資を始めて1年経つが、確定した利益はガジェットに消えている模様。 詳細プロフィール ほしいものリスト
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